私に足りなかったもの

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ある日曜日の夜、「学校のプール清掃が木曜日にあるから、水着出してー」と息子。大慌てで水着とラッシュガードを確認すると、すっかりサイズアウトしていた。去年はコロナの影響で、プールが中止となった。その為、水着の存在はすっかり記憶から消えていた。

「もっと早く言えるでしょ…」思わず心の声が漏れた。当の本人はケロッとしてるのだから、困ったものだ。

すでに夜。念の為、再度着せてみるが、何度やっても当然同じ結果である。明日から連勤だ。さすがに買いに行ける時間はない。

「とりあえずインターネットで探そう。。。」ネットという便利なツールがある時代で、本当に良かったと心から思う。

息子が通う小学校では最高学年である6年生になると、プール清掃という行事がある。言い換えれば、最高学年にしか出来ない一大イベントなのだ。一生懸命、プール清掃の手順や注意点など、事細かに話してくれた。

大人の感覚では、プール清掃は決して楽な仕事ではない。溜まった汚れや匂いを想定すると、なかなか覚悟がいる作業であろう。

どこか誇らしげに話す息子の姿が、なんだか可愛らしかった。

抱きしめると、照れながらも背中に回してくれた手が、なんとも愛おしく感じた。

気が付けば身長162センチの私と同じ目線。足のサイズと体重はもう抜かれてしまった。声変わりはまだしていないものの、夫ゆずりの体格の良さが際立つようになってきた。
改めて成長の早さを感じずにはいられなかった。嬉しい気持ちと、切なさが入り混じる。

息子の成長を感じ、自身の子育てを振り返る。ワーママとしての歩み出した日から、いつも罪悪感と隣り合わせ。側にいてあげられないジレンマを埋めるかのように、子育てに向き合っていた。

「してほしい行動」
「なってほしい姿」

そんな思いを、一人目である息子に背負わせて来てきた。育児に正解を求め、思い通りに行かない苛立ちや感情をぶつける。

「叱る」のではなく、「怒る」の繰り返し。いい母親像からは程遠く、反省の日々だった。

子どもの成長はあっという間。あと一年もすれば思春期が来て、子育ての難しさに直面するだろう。心の繋がりがより大切になってくる時期だからこそ、今一度、子育てを見直していきたい。

『子供の体感時間は、大人の6倍以上の長さがある』これはフランスの哲学者であるポール・ジャネーが考え、甥である心理学者ピエール・ジャネーが著述したことから「ジャネーの法則」と呼ばれているそうだ。

この法則では、人間の体感時間は、それまで生きてきた年齢に反比例するとされている。

10歳の子どもは、1年の長さは人生の10分の1で、40歳の大人は、40分の1の長さ。要は大人のほうが圧倒的に、時間を短く感じるのだ。

私に足りなかったものが、そこにあった。

「宿題をしなさい」「お風呂にはいりなさい」良かれと思って声をかけても、子どもたちはすぐには動かない。

「なぜすぐに動いてくれないのだろう」

「気持ちが伝わっていないのだろうか」

そんな思いが頭の中を交錯する。その苛立ちが募り、感情のまま怒りをぶつけてしまう。

ワーママとして時間の制約がある中、焦りばかりが募る日々。子どもを寝かしつけして、一人になったときに、後悔の波が心に押し寄せる。母親として「私は成長しているのだろうか」と自分に問いかける。

仮に、大人と子どもの時間感覚が違うのであれば、私がそれを理解すればいい。子どもたちと私は、同じ時間枠では生きていないのだから。そう考えると、心が軽くなった。心の内にある、苛立ちが消えていくような気がした。

私はこれから、何を大切にしていくべきか。その答えは、ただ一つ。とにかく「待つこと」子どもに対して、待つ姿勢でいることだ。

宿題してほしい。勉強をしてほしい。

早くお風呂に入ってほしい。

無意識のうちに、子どもに期待している気持ちを一旦整理する。期待する気持ちを捨て、まずは待ってみよう。口を出したくなるかもしれない。そんなときは呪文のように唱えるのだ。「子どもが動くまで、待とう」と。

怒られて嫌々するのではなく、自分で判断し行動することが子どもにとっても何より大切だ。宿題を忘れても、テストで悪い点を取っても、寝る時間が遅くなったとしても、それでいい。失敗経験がもたらす価値は、何物にも代えがたい。失敗から学び、子どもは成長していくのだ。

息子が生まれ、私の母親としての歩みは始まった。「育てる」ばかりに意識がとられ、私の成長は二の次だった。

子育てから学び、自分自身も共に成長する。その筋書きが、子育ての本来の姿であり、魅力なのだろう。

もっと子育てを楽しみたい。寛大な心と柔軟な考え方をもって、子どもに接していきたい。眉間にしわを寄せている母親より、笑顔あふれる母親でありたい。息子の成長を感じ、改めて心からそう思う。

寝る前に、子どもたちを抱きしめ「大好きだよ」「生まれてきてくれてありがとう」、そう伝え続けてきた。子育てを振り返り、私に足りていないものを自覚した今。言葉で伝えてきた思いを、行動で伝えていこうと心に誓う。

もうじき夏が来る。
6年生の息子にとっては、小学生最後の夏。自分たちの力で、キレイにしたプールに入る瞬間は、格別だろう。語ってくれる日が待ち遠しい。

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