出勤前の慌ただしい朝。洗濯機を回し、朝食とお弁当作りそして夕飯の下ごしらえを同時進行させていく。子どもたちが起きてくる頃には、一層やることが増えていき、余裕すらなくなる。一分さえも無駄にできない時間、まさに私にとって戦いだ。
そんな中、子どもたちが予想外の動きをするなんてことは、日常茶飯事。苛立ちを抑え、三人を無事に送り届ける使命を胸に、ひたすら頭と身体を動かす。時折、「世の中のママ達は、ほんとにスゴイよ。私達はよく頑張ってる。」なんて思いにふけるのだ。
ある朝、子どもたちの朝食をダイニングに並べ終わり、ホッと一息ついた。子どもたちが座っている姿を見た瞬間、「あれ。お箸用意したったけ…。」と頭によぎる。キッチンからダイニングテーブルを確認していると、末っ子が「ママ、お箸でしょ。もう並べたよ♪」とニコニコ。見ると、全員分のお箸が並べられていた。末っ子がいつの間にか、お箸を全員分を準備してくれていたのだ。その上私がの行動を察して、タイミングばっちりの声掛け。「なんでわかったのー!ありがとう!」私の驚きに、照れながらもご満悦な娘がとても可愛らしかった。
末っ子にはいつも感心させられる。5歳になったばかりなのに、5歳であることを感じさせない口調や振る舞い。上の二人と遜色なく遊びに混ざれる上に、とにかく甘え上手。兄弟喧嘩に発展したとしても、持ち前の愛嬌と憎めない性格を存分に発揮する。あっという間に喧嘩収束に至るのだから、見ているだけで面白い。
0歳からお世話になっている保育園でも、会う先生方に「いつも癒されてるんです」「ほんとに可愛くってたまりません」など、声をかけられる事が多い。先生たちの心をすっかり掴んでしまっている娘である。上の二人の時とまた違った反応に、親としても大変興味深い。「三人三様なんだな」と言う率直な感想に至る。
親の欲目を除いても、持って生まれた雰囲気に加え、社交的でおおらかな性格を持つ愛されキャラの娘。仮に悪さをしたとしても、その場の空気を察してうまく立ち回り、こちらの怒るる気力を収めてしまうぐらいだ。まさに憎めない性格と言える娘。いつの間にやら周囲の人間は、娘のペースに巻き込れ、独得な世界観に癒やされてしまうのだろう。
二人姉妹の長女として生まれた私にとって、娘の性格は率直に羨ましさすら覚える。私には出来ない生き方がそこにあった。逆に長男を見ていると、自分自身に重なる部分も多く、歯痒さすら感じる事が多い。長男の責任感の強さと負けず嫌いな性格、そしてとんでもなく不器用なところ。長男と末っ子のやり取りで、ついこちらが笑ってしてしまう事も多い。
以前、長女のことで、生まれた順番が与える影響について書いた。まさにこれもまた同様に、同じ家庭環境で育っているのに、何番目に生まれたかによって性格が変わっているのだろうか。もしそうなのであれば、本当に面白い。子どもが成長してくるにつれ、3人の個性の違いがより色濃く出てきているのだ。
ワーママとして仕事に奮闘する日々。仕事も子育てにも少し余裕が持てるようになった頃に、末っ子を授かった。上二人までは、子育てに対して責任感と常に気合いを入れてた感覚があった。だが末っ子に関してはいい意味でその気合いが抜け、子育てに手を抜いているのかもしれない。
お着替えの仕方、靴下の履き方、ボタンの止め方やお箸の持ち方。恥ずかしながら、娘には母親として教えた記憶はほとんどない。気がつけば、いつの間か出来るようになっていた。お箸の持ち方においては、3人の中で一番キレイなのだから驚いてしまう。手をかけらなかった分、兄や姉の振る舞いを見て、自然と覚えたのだろうか。
目まぐるしい日々の中で、時間をかけてあげられなかったという負い目もある。成長を記録する写真やビデオも圧倒的に末っ子は少ない。子どもが多い家庭あるあるネタでよく耳にしていた事が、我が家でも実際に起きているのだ。他人事のように聞いたことが、驚くほど重なっていく現実。子どもが大きくなったとき、謝らないと行けない日か来るかもしれない。
3人の母となり、自身のキャパシティの無さに、不甲斐なさを感じることも多い。忙しさを言い訳に手が回らないことを、正当化していないだろうか。そんな思いが脳裏を巡る。3人を育てる重責を、親として自覚しなければいけないのに。。。仕事と家事育児を、こなすだけの生活ではダメだと自分に言い聞かせる。
末っ子が生まれ、子どもの同士で遊ぶようになり、親の出番は格段と減った。何で遊ぶのかですら、多数決を取りながら決めていく。遊びの中でぶつかり合い喧嘩になることもあるにせよ、誰かが仲裁役になり、自然と解決へ導いていく。子どもたちの中でコミュニティが自然と生まれ、そこから社会性を身につけ、多くを学ぶ。
親としてそんな光景を見ていると、おもわず目尻が下がってしまう。頼もしくもあり、3人の子どもたちの親となれた事を、何より幸せに感じる瞬間だ。
成長と共に色濃く出て来た個性の違いを、親としてより理解していきたい。そして子どもたちが大人になったときに、「3人兄弟でよかった!」と感じてもらえる子育てをしていきたい。
そのために、私に何ができるのだろう。
何が答えで、何が正しいのか。正直今はまだ分からない。ただ、3人の母として「楽しめる課題」にしていきたい。余裕が出てきた今だからこそ、「子育てを全力で楽しむ」そんな課題により挑戦していきたい。
「ママいつもありがとう」そんな言葉が自然と出る子どもたちを、本当に誇りに思う。「この子達の親になれてよかった」心からそう感じる。