生まれた順番は、子どもにどんな影響を与えるのだろう。
3人の子どもたちを育てる生活の中、ふとそんな思いにふける。
「ママ見て。今日もハナマルもらったよ」
「今日ね。先生がこんなこと教えてくれたよ」
「今日はお友達と、こんな遊びしたんだよ」
仕事から帰ると、長女が真っ先に駆け寄ってきてくれる。
学校のこと、
先生から教わったこと、
友だちのこと。
記憶が薄れないうちにと、懸命に話してくれる姿はとても愛らしい。3年生になってからは、娘がその時間がより大切にしているように感じる。自己主張をあまりしない娘にとって、かなり大きな変化だった。
やることが山積みで、曖昧に返事をした時には、娘からのお叱りを受けるぐらいだ。次女が負けじと、保育園であった出来事を話しに来ると、「今、ねえねが話してるのー!」と止めに入る。そんな可愛い姉妹の喧嘩の声で、家の中が一段とにぎやかになる。
長女は3人兄弟の真ん中。 専門的な言葉で言うと、中間子と言うらしい。やんちゃな兄と、甘え上手な妹に挟まれる立場。
そんな娘は保育園時代から、どちらかと言えば優等生タイプ。先生の言ったことをきちんと守り、お友達との争いごともない。先生からは、いつもお褒めの言葉をかけられることが多かった。
困っているお友達がいたら、手を差し伸べお世話をしてあげる。「空気が読める」「しっかりしている」「周囲に気遣いができる」そんな言葉がまさ当てはまる。
小学校に入っても、それは変わらなかった。最近では私が横になっていると、「ママ疲れてるの?マッサージしてあげるよ」と声をかけてくれる。疲れちゃうからいいよと断っても、「大丈夫!」と言って、小さな手で懸命にマッサージをしてくれるのだ。そんな娘の気遣いに心が温かくなる反面、なぜか複雑な思いになった。
3姉妹の真ん中だった私の母からは、「長女を気遣ってあげないとだめよ」と言われることが多かった。「子ども時代、いつも寂しかった」という過去の記憶が色濃く残る母にとって、長女が心配でならなかったのだろう。
姉として育った私にとって、兄弟に挟まれる立場は未知。その立場がどう心に影響を与えるのかを、想像することしかできない。母からの助言を頭の片隅に入れ、3人の子育てに奮闘した。
親としては、本当に育てやすい子だったのかもしれない。次女がぐずっているとき、「わがままを言ってはいけない」「ママに迷惑がかかってしまう」そんなことを、幼いながらも早い段階で理解したのだろうか。授乳しているとき、抱っこしているとき、寝かしつけているとき、長女がわがままを言ってきた記憶を探しても見つからない。
本当は構ってほしかったのかもしれない。もっとわがままを言って、甘えたかったのかもれない。無意識のうちに、空気を読む子にしてしまったのか・・・。そんな思考が頭の中を巡る。そのたびに、心が痛かった。
子どもたち3人に平等に愛を注いでるつもりだった。けれども、その愛に偏りが生じていたのだろうか。
子育てを振り返り、自問自答してみる。
長子である息子の身に起きることすべては、私にとっても全てが初めての経験。直面する問題があれば、全力でその問題を解決してきた。結果として、何歳になっても何かと気にかかる存在であることは、否めない。
それとは反して、子育や仕事に余裕が出てきた頃に生まれた末っ子。長女と4歳離れていたこともあり、上の二人からも気にかけて貰えている存在。家族の中で一番小さいため、なにかと可愛がられる。まさに誰よりも甘え上手。
そんな二人に挟まれた長女。
空気を察してか、構ってほしい気持ちを隠し、面倒がかからない子のようにさせてしまっていたのかもしれない。
私がバタバタしていると、末っ子の髪を結ってくれる。末っ子が泣き出すと、一番に駆けつけて慰めてくれている。3人の中で、誰よりも優しさや愛情を注げる子。私にとって頼もしく、何より誇らしい存在だと改めて気付かされる。
彼女の優しく温かい心を、より大切にしていきたい。仮に寂しさを心の内に閉じ込めて来たのであれば、心の奥底の気持ちを受け止めてあげたい。上の子ほど頼れず、下の子ほど甘えられず我慢してくれていた時間を、愛情で埋めてあげたい。母親としてまだまだ未熟だけれど、精一杯愛を伝えて行こうと、心に誓う。
「お姉ちゃんだから」「お兄ちゃんなのに」と何気なく使っている言葉。子どもにとっては、生まれる順番を意識するような呪文に変わってしまう。親の都合のよい言葉が、子どもを傷つけてしまうことを忘れてはならない。
先輩ママから、女の子の反抗期に苦労した話を耳にする。男のコより難しいという人もいる。あと数年もすれば、娘もそんな年頃になるだろう。だかこそ、今しっかり愛情を伝えていきたい。
100均が大好きな娘。買い物に行くと、カゴを手に持ち、誰よりもじっくり吟味する。「ママ、これはどう?」「これ、カワイイ」と嬉しそうに話す姿は、たまらなく可愛い。
今度の休日、二人で出かけよう。末っ子は拗ねるかもしれない。それもまた成長。
手を握り、二人っきりの時間を満喫したい。キラキラした目で選ぶ娘の姿が、目に浮かぶ。今から楽しみだ。