中学生になった長男と交わした約束

 今年の4月、長男は中学生になった。

柔らかい日差しと桜満開の春に迎えられ、小学校へ入学した日から気がつけば6年。不安と期待が入り交じった感情で、ランドセルを背負った息子を送り出す日々も振り返れば懐かしく感じる。

第一子である息子の歩みは、母親としての歩みそのもの。経験する出来事全てが初めてであり、全てが不安。そんな繰り返しで、息子も私も成長し続けてきた。

幼かった息子が、気がつけば中学生。友達の子どもが中学生と聞けば、『もうそんなに大きいの?』なんて驚きを感じつつも、『我が家には遠い未来のことだ』だなんて悠長に考えていたぐらいだった。

まさにその驚きの世界に足を踏み入れたのだ。小学生とは違う緊張感を感じつつ、子育ての第二幕が始まった。

中学生になって息子と交わした約束は2つ。

①学校・塾・習い事などの準備は自分でする。

②お弁当箱は自分で洗う

息子にとっても私にとっても、かなり高いハードルの約束。けれども、私たち親子にとって中学校生活をスタートするにあたって、とても大切なルール。

イヤイヤながらも『わかったー』と同意を得ることが出来た。

 交わした約束事は、私達親子にとって難題中の難題。子育ての第二幕を飾るにはふさわしい。

まず息子は何かを一人で準備をするのは、あまり得意ではない。と言うか、今までほとんどさせてこなかった。

実家に遊びに行くと、よく父から『一から十まで言う必要も、する必要もないんや』と怒られた。父の目には私の子育てがは、まさに過保護の極みに映っていたのだろう。

『出来ないんだから、してあげないといけない』まさに勝手な思い込みの子育て。『子どもの自主性を育む』なんて子育てからは、明らかにほど遠いものだった。父の発言に対しても『はいはい、分かってるよー』なんて空返事をしつつも、内心『お父さんには分からないんや』と反発心すら抱いていた。

子どもの気持ちは差し置いて、『よかれと思ってついつい手を出す親』まさにこの一言に尽きるのかもしれない。息子が誕生し、常に気にかけてきた。パーフェクトにしなきゃという想いと、それが叶わないジレンマの狭間でもがいて来た気がする。

『親としてしっかりしなきゃ』という間違った責任感が、子どもの自主性を育む芽を摘み取ってしまっていたのかもしれない。

・バナナは皮をむいて、食べやすいサイズにカットする

・牛乳がほしいと言えば、こぼれるのを予測し私がコップに注ぐ

・コンビニのおにぎりは、フィルムを全て取り除いて渡す

・帰宅した息子に『給食袋出しやー』と声をかけつつも、勝手に外して洗う

・筆箱整理するように促すが、気になって中身チェック(完全におせっかい状態)

・ラグビーの練習や試合の前日には、息子が寝てる間に用意する

・息子が着替える服を準備する(完全に私の好みの組み合わせ)

上にあげた私の行動は、ほんの序の口だ。『何でもやってしまうリスト』の提出を求められたならば、膨大な枚数が完成してしまうだろう。今書き出してても、恥ずかしい限りだ。

実際に、息子が自ら進んで何かを準備することは、本当に希だ。声をかけても、『わかったぁ』と返事しつつも上の空。

小学校高学年になり、『まずいな・・・』と焦りだし、声掛けをやめてはみたはものの、なかなか効果は得られなかった。

夜になり、ランドセルに取り残された給食袋。それを見つめ、ため息交じりに取り外す日々。『父の話にもっと耳を傾けておけば良かった・・・』今更ながら、大変悔やまれる。

 『手をかけすぎない子育て』が子どもの成長にどれだけ影響を与えるのか。まさに実証するのが、我が家の末っ子だ。0歳から保育園に通う末っ子は、上二人の影響もあってしっかり者。おしゃべりも行動も三人の中で、群を抜いて成長スピードが早い。

年長さんになった頃には、自分で保育園の準備をするようになった。園から帰るとご機嫌さんでキッチンに立ち、お箸セットをちゃちゃっと洗う。5歳になったばかりの末っ子から『ママ、お箸洗っておいたから♡』と声をかけられ、『ありがとう』と返す日常。

寝る前には『明日の準備しなきゃ』と言いながら、保育園バックの中身と制服の準備。洗いたてのポロシャツと制服をきちんとハンガーに掛け、次の日使うマスクや靴下もばっちりセット。

最後に私の元へやって来て『ママ、お帳面よろしくね』と得意気に言ってくる娘は、最高にキュートだ。

コンビニで買ったおにぎりを開けて渡そうとすると『あっ、分かる分かる。ママ、大丈夫よ』と構造を観察。そして見事きれいに開けてしまうのだから、感心しっぱなしだ。

長女も長男に比べるとしっかりしたほうだが、末っ子の足元には到底及ばない。末っ子を見ていると、『いかに手をかけてこなかったか』を実感する。

 しっかり者の末っ子の存在は、息子にとって良きお手本だ。『にぃに、〇〇ちゃん本当にすごいよなぁ』という声を聞けば、兄の威厳を保つためにも、交わした約束を実行するしかないのだから(笑)

そんな長男くん、私に似て不器用ながらも、4月から絶賛奮闘中だ。夏休み前の懇談では提出物関連は、先生からお褒めの言葉を頂けた。特に提出物関連は、ほぼノータッチで来たので、ほっと胸をなでおろした。

 『私が言わなくても、出来るんだ』と、純粋に嬉しかった。当たり前のようにやってきた行動を辞める勇気がどんなに大切なのか。今まさに身を持って知ることができた。

 最初は四隅に油が残っていたお弁当箱も、今ではお湯を使うという技を覚え、ピッカピカだ。『お弁当箱、洗うの上手くなってきたやろ?』私の元にやってきて、得意気に話す息子が頼もしい。抜かされた背丈と声変わりした低い声の相まって、成長が垣間見える。『明日のお弁当作り、また頑張ろう!』そう思わせてくれる。

ラグビーの準備も毎度大騒ぎだが、なんとか頑張ってくれている。持ち物が多いのと、元々自主性を重んじるチームなので、交わした約束を存分に発揮できるチャンスなのだ。

 中学生という節目だからこそ、このチャンスを逃したくない。いい意味での親離れ子離れへの第一ステップ。どんどん邁進していきたい。

思春期へ突入し、私達親子のパワーバランスもより変化してくるはずだ。まだまだ素直で可愛らしい息子。

いつの日か口を聞かなくなる時期が来るかもしれない。来たるべき反抗期に向けて、私自身心の準備をしていきたい。

これから先の息子の成長が楽しみだ。

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